今までの上下の入れ歯と自分の歯がいよいよどうしようもなくなり治療、最終は金属床義歯を装着
治療前の状態
10年ほど前に上の両奥にブリッジ、下の両奥に金属冠・ブリッジを入れ、上下の歯のないところに入れ歯を入れていたが、この数年入れ歯のバネのかかった冠やブリッジの動揺が強くなり、遂に自然に冠やブリッジが抜けてきた。
多忙で歯科医院に行けなかったので、それぞれ抜けた冠・ブリッジはなんとか歯ぐきに戻し、入れ歯もその上にはめて使っていた。 最近では左右上下の4ヶ所のバネにかかった冠・ブリッジが全て完全に抜けてしまい、毎朝その抜けた冠・ブリッジをうまく歯ぐきにはめ、その上に更に入れ歯を入れ恐る恐る食事をとる毎日だったがいよいよそれも大変になってきて来院。歯冠(歯の上の部分)まである歯は下の前歯1本と上の奥の方の大臼歯のみで、左下前歯の2本は根だけの状態
治療
① まずとりあえず今着脱しなければならない4ヶ所の歯やブリッジを今の入れ歯に装着して仮義歯として何とか咬めてしゃべることができるように修理。
② 次に歯周病治療と平行して、どうしても残せない歯や根を抜歯し、使ってる入れ歯も修理、調整し日常生活で困らないようにします。
③ 下は真ん中の前歯1本のみが歯冠まであり、この歯にバネがかかり入れ歯は何とか安定している。幸い上下に残せる根があるので、先に磁石を取り付け仮義歯をより安定させます。
④ 下の入れ歯の前歯のバネは患者さんも気になっており出来たらなくしたいという希望があるので入れ歯の安定と審美的な点からこのバネをはずし、バネのかかった歯の歯冠を切り、この根に磁石と吸着する金属を入れ、とりあえず古い入れ歯に磁石を取り付け入れ歯をピッタリ吸着させます。
⑤ 新しい入れ歯が完成したら古い入れ歯から新しい入れ歯に磁石を取り付けなおしてつかうことを予定。このようにすると新しい入れ歯が出来る間、仮義歯も安定し、入れ歯がはずれにくく助かるわけです。(役に立ちそうにみえない小さな根が非常に役立ち、毎日が本当に助かるケースがよくあります)
⑥ 一応仮の古い入れ歯が少し安定したところで今度は更に下の前歯に2本の根が残っているのでこの根の治療を行い、この歯に入れ歯に入れた磁石がピッタリ吸着する金属を取り付ける。この治療に1本の磁石で吸着していた仮義歯に更に2つの磁石がとりつけられ入れ歯の安定が一層しっかりしてきます。このように磁石は上下全体の入れ歯治療の際の古い入れ歯や仮義歯から新しい入れ歯に移行していく何ヶ月もの間に、先に磁石だけを取り付けながら進行していくと、その間の仮義歯を使って食べたり、しゃべったりする日常生活が実に楽になります。1本の根も大切にしたい所以です。
⑦ 歯ぐきが固まってきたら(仮義歯を入れていると歯ぐきの固まりも早いのです)いよいよ新しい入れ歯の型をとり、咬み合わせをとり、新しい入れ歯の歯・人工歯の試適、つまり口腔内での歯の並び方や咬み合わせが良いかチェックして、最終義歯の完成となります。この段階での型どり、咬み合わせ、歯並びの調整、磁石の取り付けなどの一連の治療は、入れ歯つくりで最も重要な過程で、歯科医の技量がしっかり問われる重要なステップです。患者さんも大変ですが、歯科医も真剣勝負です。
⑧ 入れ歯が完成したら最終の咬み合わせなどのチェック・調整を慎重に行い、いよいよ完成です。
⑨ しかしこれで入れ歯が入ったら終わりではなく、2~3日後には咬み合わせなどのチェック・調整をします。上下にわたり広い範囲に口腔の状態や崩壊咬み合わせが崩壊していた難症例ほど、咬み合わせは安定していませんから一定するまで調整が必要です。痛い、はずれるなどの問題があるときはそのままにしておかないで(様子を見るのはいいですが)連絡をください。その後1~3ヶ月以内には来院していただきます。
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