上下の入れ歯と自分の歯がいよいよどうしようもなくなり受診。最終は茶筒式義歯(コーヌス義歯)を装着
治療前の状態
上下に昔から入れ歯が入っている。バネのかかっている3本の歯がグラグラで咬めない。 他の上下の歯は残せる歯。以前からプラスチックの入れ歯をいれているが、バネのかかった歯の揺れが徐々に大きくなり自然に何本も抜けたりで、入れ歯も傾き見た目も悪く、どうしたら良いか迷っているうちに、どうしようもない状態になり、いよいよ困り来院。
治療
まず義歯を作る
今の入れ歯では日常生活に支障があるほどなので、まず仮義歯をつくることに決定。この仮義歯はとりあえず毎日の生活に困らないためにつくる。事前にこれからつくる新しい入れ歯の審美性・咬み合わせの参考にするためにも利用する。グラグラの歯や、ムシ歯が歯ぐきの下まで深くなって、どうしても残せない数本を抜歯。
仮義歯の大きな役割
抜歯した時に(特に前の歯など)歯が抜けたままの状態がないように仮義歯を入れる当日か前日に抜歯予定の歯を抜き、想像して並べてつくった歯をピッタリと入れます。このようにすると、今の困った状態(咬めない、しゃべれない、痛い)を早急に解消でき、しかも歯のない状態の期間がほとんどなくて済むので、上下全体的な口腔崩壊のケースには大変有効な治療法です。
更に新義歯をつくるにあたっても様々な点で参考にもなります。歯ぐきの固まるのも仮義歯を入れているほうが早く固まります。(今まで使っていた古い入れ歯の形や、咬み合わせに問題のない時には、その入れ歯に歯を足したり削ったりして、仮義歯の役割をしてもらいます。)ただしこの入れ歯をつくるにはなかなかの神経を使います。
型どりの時
型どりの時にグラグラの歯が型どりの材料(印象材)と一緒に抜けてこないように工夫します。もしグラグラの歯でも手で引っぱったらすぐ抜けそうな歯でも、仕事のある人はもちろん、家庭にいる人でもなくなってしまってはその日から困ってしまいますから、型どりをして一週間後の仮義歯が入るまでは歯が抜けるなどないように工夫しておきます。
型どり後1週間で仮義歯を作る
普通上下全体で残った自分の歯が少ない大きな義歯をつくる場合通常なら1ヶ月近くかけて進むところを同日に型どり、咬み合わせをとってしまい1週間で完成させます。
更に想像を出来るだけ正しいものにするために、治療中の写真はもちろん、昔の歯がそろっていた頃の写真を数枚持ってきていただき、その写真を参考にして技工士さんと密接に連絡をとりつくっていくのです。とにかく一回の型どりで患者さんの顔にあったように並んだ入れ歯をつくらねばなりません。1~3本の歯なら簡単ですが元々ない歯を含め、上下総入れ歯のように20本以上の歯がない上下の入れ歯を想像に頼り一発完成しなければならないことも珍しくありません。
しかも失敗は許されません。とにかく患者さんはこの仮義歯で治療終了直後から仮義歯をいれて見た目がおかしくなく、話したり、食べれたりしなければいけないのです。全ての歯科治療は真剣勝負の連続ですが、この仮義歯装着日の緊張度は歯科医も患者さんも大変なものです。患者さんも仮義歯装着後は急に新しい入れ歯に慣れなければなりませんから大変です。
しかし安心していただきたいのは、多くの患者さんは仮義歯を入れたことで前より歯もきれいになり、食べるのも話すのも楽になった、早く決断すれば良かったと言います。 このように日常生活に困らないようにしておき、ムシ歯・歯周病の治療を続けます。 毎回の治療で冠やブリッジをはずしたり、ムシ歯の治療や、根管治療(根の治療)をしたり、歯周病の治療をするので、その都度仮義歯を修理・調整し、日常生活に困らないようにします。神経のある歯は出来るだけ神経を残し、生きたままにしておきたいと思います。歯の治療が終わり、歯ぐきが固まってきますといよいよ新しい入れ歯の型どりとなります。
茶筒式のコーヌス義歯をつくる
今回は審美的な金属の見えない義歯を入れたり、残った歯や歯の周りの歯周組織に負担がかかりにくく、歯を長持ちさせる入れ歯をつくりたいということで、茶筒式のコーヌス義歯をつくることになりました。コーヌス義歯は1回の治療時間はかかりますが、全体の回数としては通常の入れ歯とそれほど変わりませんが、ほとんどのコーヌス義歯はその調子と予後は非常に良く、確実な結果が出ます。入れ歯の王者といわれる所以です。
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