装着したその日が入れ歯作りへのスタート
何故かといえば、複雑な口腔に難症例の入れ歯をフィットさせるには、少しずつ調整しその結果をみて又調整をする・・・これを繰り返します。歯科医と患者さんがゴールを目指し努力すれば、必ず良い結果が待っています。どんな症例でもミクロン単位の調整を続ければよく咬めるようになり食事もおいしくなります。患者さんも頑張ってください。
「まず初日はスープで口を慣らす」
初めは特に高齢で歯ぐきの土台が平らあるいはへこんでいる、総入れ歯、あるいはほとんど歯がない人は、まず入れ歯に口腔の歯ぐき、筋肉が慣れるために初日はスープ、おかゆなどをとっていただき、翌日から柔らかいものを少しずつ小さくしてゆっくり食べていただくと良いと思います。
最初の1週間は特に咬み合わせなどの調整をしながら食べていくということになりますから、小さめ柔らかめが原則です。キズができないように少しずつ慣れてください。入れ歯は2枚のガラスを水に介して合わせると陰圧が働いてはずれないという原理を使用していますから、2枚のガラスが少なくとも、ピッタリと合わないとすぐ外れます。その為咬み合わせの調整は全体が均等に咬むように調整するのですが、実際に食べる段階になると治療室でピッタリしていても、その通りに咬めるとは限りません。後は徐々に調整して慣れてもらいます。
入れ歯を入れて2日目にはチェックのために来院して頂き調整を行います。入れ歯があたって痛いなどの時は、遠慮せずに来院下さい。痛みがなくしっかり咬めるまで調整しなければいけません。時には症状の内容によっては数日様子を見てから調整するほうが良い場合もあります。
いずれにしても難症例義歯は装着されたその日が「入れ歯のスタート」ともいえます。
なぜかといえば、複雑な口腔に難症例の入れ歯をフィットさせるには、少しずつ調整しその結果を見ながらまた調整をする、これを繰り返すしかありません。歯科医と患者さんがゴールを目指し協力すれば、必ず良い結果が待っています。どんな症例でもミクロン単位の調整を続ければ必ず良くなりますから頑張ってください。
「難症例の方は特に慎重に慣れていく」
上下でしっかり咬み合う歯のある方のようなケースは比較的咬み合わせも安定していますから、あまり困るようなことはないのですが、徐々に慣れるようやはり柔らかいものから少しずつ咬んで下さい。一応一週間後には診せてください。その後は1ヶ月から3ヶ月後に一度診せてください。 なんといっても難しいケースは、高齢の方、上下でしっかり咬み合う自分の歯が無い方、歯ぐきの土台が無い方のケースです。
家で食事をとる時の咬み合わせは医院で咬んでいる時とは異なり、リラックスしていますから患者さん本来の咬み合わせで咬むことになります。医院で意識的に咬んでいた状態とは微妙にずれていることが多いわけです。(特に難症例では)
ですから、入れ歯が新しく入っても、初めは無理に咬んで慣れようとするのではなく、柔らかい食べ物を小さくして少しずつ食べ慣れていくのが正しいと思います。入れ歯が入ったその日から慣れなければいけないと咬み応えのあるもの、硬いものを無理して食べると歯ぐきも薄くなっているのでキズができてしまいます。すると痛いので、それを避けようと本来の咬みあわせがずれてしまい正しい調整ができなくなってしまうことにもなるので、とにかくキズができないように注意し、もしズレて痛そうな時には早めに歯科医に診てもらって下さい。
よく咬める義歯は日頃の咬み合わせ(アゴに力を入れた時や緊張してグッと上下の歯を咬んだり、アゴを動かした時の咬み合わせ)が左右で均等に咬み、アゴの動きがスムーズになるよう調整されていることです。そうすれば、口腔の歯や歯ぐきやアゴの骨に異常な力もかからずよく咬め口腔全体の健康に大きく寄与することになります。
咬み合わせがしっかり決まれば入れ歯がピッタリとなり違和感も減るし食事もおいしくなります。味覚の感じ方は、食べ物の中の味物質というものが咬むことにより唾液とまざって溶け出しそれが舌の味を感じる細胞に届けられ味を感じるのです。つまりしっかり入れ歯で咬めるほどおいしく食べられるのです。 両奥のアゴの土台が通常よりも1cmもへこんでしまっている難症例のお年寄りも新しい入れ歯をいれて咬めるようになると味までおいしくなったと満足します。
病院勤務の給食担当の栄養士さんは来院時は上下の調子の悪い入れ歯を入れていました。いつも給食のときに味がわかりにくいので入れ歯をはずして味をみていたそうですが、精密な上下の入れ歯を作り直したところ入れ歯を入れたままで味がよくわかるようになったと言っていました。 咬み合わせがしっかりした感覚のよい入れ歯は、特においしく食事をするという点においてはとても大きな役割を果たします。